渡辺あや脚本のドラマ『エルピス(長澤まさみ・眞栄田郷敦主演)』の反響大!島根の雑貨店発信 渡辺あや脚本の魅力とは

渡辺あや脚本。

気になるドラマには、必ずこのクレジットがあったように思います。

渡辺あやは、
島根在住の脚本家で、雑貨店を営む家庭の主婦脚本家で、
しかも超寡作の脚本家だと記憶しています。

なのに、
エルピス、今ここにある危機と僕の好感度、ジョゼと虎と魚たち、合葬、ワンダーウオール、逆光、
そして、2023秋には公開されるであろうABYSSと、
頭の中に、いくつかの作品名がすらすらと浮かんできます。
すべて、渡辺あや脚本作品のはずです。

長澤まさみ、眞栄田郷敦、松坂桃李、中川大志(声優として)、妻夫木聡、,柳楽優弥、須藤蓮、、と
主演が華やかだったこと抜きに、作品そのものが私に刺さって、
脚本家が気になったのです。

ドラマ『エルピス』の興奮冷めやらぬ今、
そして、注目若手監督須藤蓮との共同脚本作品、映画『ABYSS』公開が待たれる今、
改めて、
渡辺あや(脚本家)について語りたくなりました。

 

渡辺あや脚本と言えばドラマ作品『エルピス』(長澤まさみ眞栄田郷敦主演)大反響! 松坂桃李主演『今ここにある危機と僕の好感度』も渡辺あや脚本!?

渡辺あや脚本、と言えば
『エルピス(関テレドラマ)』『今ここにある危機と僕の好感度(NHKドラマ)』の2つが
真っ先に私の頭には浮かびます。

渡辺あや脚本のこの2作品『エルピス』『今ここにある危機と僕の好感度』は、
どちらも、
「うわあ、こんなの、地上波で、よく放送できるよね?!」
と、つい声が出てしまうほどの作品。

リアルな社会の権力者側の暗部を、
なんの力ももたない若者が、
抉り出し、糾弾し、現時点でのベストに着地させます。
もちろん妥協はあります。
ですが、曲げられない一点=糾弾すべき事態は必ず変える、という驚くべきストーリーです。

さらには、主人公の若者は決して不屈ではない、というリアル感。
長澤まさみも眞栄田郷敦も松坂桃李も、
現実世界できっとそうだろうと思われるほど
折れます。
逃げもします。
病みます。
けれど、それでは終わらない。
必ず、その真摯さ正しさに共鳴する人が彼らを支えます。
折れながら、傷つきながら、逃げながら、病みながらも、
正しい方に目を背けられなくて、大きく一段ずつ成長するのです。

で、驚くべきはこの2作品『エルピス』『今ここにある危機と僕の好感度』が、
方やシリアス、方やコメディというふり幅の大きさ、豊かさ。
これが渡辺あや脚本なんだなあと、
『エルピス』『今ここにある危機と僕の好感度』の2作品を、
渡辺あや脚本の象徴のように私は思っています。

(なお、渡辺あや脚本作品で、最も有名なのは、NHK朝ドラ『カーネーション』かと。)

 

渡辺あや脚本ドラマ『エルピス(長澤まさみ眞栄田郷敦主演)』『今ここにある危機と僕の好感度(松坂桃李主演)』他、渡辺あや脚本の特徴は?その1

渡辺あや脚本の特徴、その1は、
作品の作り手みんなが共通認識を持って、同じゴール、同じ表現を求めるということ。

 

昔からの脚本の執筆方法として、作品のプロデューサーとなるべく作品のテーマに対する共通認識を互いに持つ形で脚本を執筆している    「Wikipedia  渡辺あや 人物」より

上記の引用が渡辺あや脚本の大特徴と言えるのではないでしょうか。

『エルピス』をこの代表として、
「作品のプロデューサーとなるべく作品のテーマに対する共通認識を互いに持つ」
という執筆方法について少々詳しく書かせてください。

渡辺あや脚本のドラマ『エルピス』は、
この作品のプロデューサー佐野亜裕美との共作と言えます。

2016年の制作企画当初、佐野亜裕美が
渡辺あやに依頼の脚本はラブコメだったと言います。
渡辺あやは、脚本執筆姿勢として、プロデューサーとの共通認識を持つべく話し合ったそうです。
が、ラブコメでは二人の話は全く盛り上がらなかったそう。
一方「今の日本」への違和感で、ふたりは大いに盛り上がり、
報道の自由、ジェンダーギャップ、司法制度の改革といった
社会への憤りを共通してもっていたことに気づいたと言います。

一転、ドラマのテーマは「冤罪」となり、
渡辺あやは脚本を一気に3話まで書きあげて、
あて書きともいえる主演キャスト長澤まさみに佐野亜裕美が打診。快諾を得ていたと言います。
売れっ子長澤まさみを「出たい」とまで言わせた作品『エルピス』は、
ふたりが持った共通認識通り、
報道の自由、ジェンダーギャップの解消、司法制度の改革を訴える、
つまり、これらを訴えるがゆえに、時の政治に真っ向から批判する、糾弾する
脚本になっていたのです。

こうして、渡辺あや(脚本)・佐野亜裕美(プロデュース)の社会派ドラマ『エルピス』が、
世に出ると思われた矢先、
佐野亜裕美は転属となり、退社して、お蔵入りとなったと言います。(フライデーが理由を報道済)

けれど佐野亜裕美はあきらめず、
2022年、『エルピス』を制作すべくフリーランスとなり、
制作できる場を探し続けたと言います。

結果、ついに関テレから「これはやるべき作品だ」と高い評価を得ることができたそう。
ここまで佐野亜裕美を突き動かした渡辺あや脚本『エルピス』。
渡辺あや脚本そのもののすばらしさもさることながら、
渡辺あやの脚本執筆姿勢である「プロデューサーと共通認識をもつ」ということが、
佐野亜裕美と渡辺あや自身をつなぎ、
佐野亜裕美の背中を押していたと言えるのではないでしょうか。

渡辺あや脚本の特徴その1は、
とことん話し合って共通認識を創る、というより、もっと、
作り手(プロデューサー・キャスト等)を心強く支える
連携力、連帯力を創るということかもしれません。

 

渡辺あや脚本はデビュー作映画『ジョゼと虎と魚たち(妻夫木聡主演)』からずっと島根の雑貨店から発信 渡辺あや脚本の特徴は?その2

渡辺あや脚本の特徴、その2は、
マイノリティ、あるいは社会的弱者にスポットをあてること。

渡辺あやは、
大学をでて就職しすぐ寿退社。
夫の赴任でドイツ暮らし。
帰国後は夫の実家である島根県の雑貨店で主婦。
という、人気脚本家のなかでは異質な感じのするプロフィールをお持ちです。

それが1999年、30歳を目前に、岩井俊二のシナリオ応募コーナーに応募し、認められたそうです。
このときのシナリオがきっかけで、2003年映画『ジョゼと虎と魚たち』で脚本家デビュー。
脚本家渡辺あやの誕生です。

渡辺あや脚本デビュー作映画『ジョゼと虎と魚たち』は、
大学生と脚が不自由で「いないことにされている」少女ジョゼの物語。
フランソワーズ・サガンが好きな少女を愛するようになった大学生が、
社会の中で、障がいのある人間と向き合う責任を持てない自分、
愛するジョゼひとりを抱えきれない弱い自分に気づいてしまいます。

もちろん、それでは終わらないのが渡辺あや脚本作品です。
無力感を味会いながら、大学生恒夫は、
周りを徐々に巻き込み、ジョゼの存在とその感性のすばらしさを明るみに出します。
ジョゼは、初めて、思い描いていただけの海を観ることができるのです。

ジョゼは、両脚が不自由な社会的弱者。
街で障害を持つ人を見かけることは少なかった時代です。
ジョゼを孤児院から引き取ったおばあさんは生活保護で暮らしています。
これまた、社会的弱者です。
主人公も大学生とはいえ、家が貧しく、留学のために生活費を削っています。
社会がこうだったら、と提言しながら、
できることを皆がします。
その時のベストをつくして、その時のベストに着地します。
やっぱり、その過程はきれいごとでないリアルです。

渡辺あや脚本は、
常に社会のマイノリティや弱い立場の人にスポットが当たっているように思います。
権力や常識に、ちゃんと向き合っている、闘っているようです。

前述のドラマ作品以外でも、
映画『合葬(2015) 柳楽優弥主演』では、幕末の志士が新政府に、
ドキュメンタリー映画『ワンダーウォール(2020)』では、立ち退きを要求される寮生が大学当局に、
映画『逆光(2021須藤蓮監督・主演)』では、性的マイノリティの青年に、
スポットをあてて描いています。
マイノリティのリアルを、マジョリティである大衆に伝えます。
権力にも常識にも声を挙げます。
渡辺あや脚本は、声を挙げられないマイノリティの声、マイノリティの代弁のように思えます。

 

渡辺あや 脚本だけじゃない 監督・制作も できたのはどんな映画?

渡辺あやの脚本づくりからなら、必然的にこうなるだろうと思います。
渡辺あやは、脚本にとどまらず、制作に、映画を創ろうとする若者の支援にも携わっています。

2022年の『逆光』という映画では、
監督・主演も務める須藤蓮と、脚本を共同制作しています。

須藤蓮は未だ慶応大生、現役大学生でありながら、
モデル、俳優として知名度がありますが、
彼、須藤蓮は渡辺あやを、渡辺あやの脚本を尊敬しているのだと言います。

その須藤蓮の懇願に応じて、
渡辺あやは須藤蓮とともに『逆光』の脚本を共同で書いたのです。
1970年代の尾道を舞台に、自主制作されたこの映画『逆光』は、
ロケ地でもある尾道で上映され、やがて東京で上映され、全国公開になっていました。

須藤蓮はこれをきっかけに「FOL(fluit of love)」という活動を開始。映画作りに専念します。
FOLは、「文化の力で人と世界を輝かせる」ことを目標に仲間としている活動の総称だそうですが、
渡辺あやは、いち早くこの活動に賛同・参画し、
クラウドファンディングによる資金提供も行っているようです。

そして、このFOLの活動の「果実」として
2023秋には、渡辺あや・須藤蓮共同制作・共同脚本の映画『ABYSS』が公開予定です。

渡辺あやは、主婦から脚本家に、そしてプロデューサーに、
またいつかは監督渡辺あやの作品を観られる日がくるかもしれません。

なお、ABYSS(アビス)は、「深淵」「奈落」という意味だそうで、
どんな「救い」が用意されているのか、展開が気になります。
渡辺あや・須藤蓮脚本の映画『ABYSS』は、
23歳のケイが主人公。
バーテンダーやモデルのアルバイトをしながらフラフラと暮らしています。
ある日、兄自殺の知らせが届き、葬儀に参列して、兄の恋人ルミと出会います。
題名からして、きっと、さわやかで切ないラブストーリーではないはず。
やはりマイノリティといえる青年ケイは、
「ABYSS奈落」から這い上がれるのでしょうか。
いえ、もっと「ABYSS深淵」に引き込まれていくのでしょうか。

渡辺あや・須藤蓮の共通認識による、共同脚本が、たまらなく楽しみです。

ところで、渡辺あやの、映画に対する思いが、
FOLの活動開始に寄せたメッセージから伺えます。引用します。

映画というすばらしい文化が大好きで、
その未来がもっと楽しく明るくなればいいなと思って全員全力で奮闘しております。
どうぞご支援よろしくお願い致します。

 

渡辺あやはドラマ・映画の脚本だけじゃない 椎名林檎に歌詞を提供?

そうなんです。
渡辺あやはドラマ・映画の脚本・制作にとどまらず、
歌詞も歯発表されています。

驚くなかれ、椎名林檎『孤独のあかつき(2013)』です。

渡辺あや歌詞提供の楽曲『孤独のあかつき』は、
Eテレ「SWITCHインタビュー 達人達」のテーマソングです。

椎名林檎と渡辺あや。
ふたりはNHK朝ドラ『カーネーション』のタイトル曲担当と脚本家、という間柄。

NHKから依頼をうけた椎名林檎は、
「SWITCHインタビュー 達人達」の趣旨に合わせ、
畑違いの達人同士の組み合わせでこのテーマソングを作ろうと目論んだわけです。

Eテレ「SWITCHインタビュー 達人達」をご覧の方も多いかと思います。
テーマソング『孤独のあかつき』しびれます。

いとしくて涙があふれて
かなしくて星空見上げて
目映い光に目を瞑ったら
僕らいま夜明けまっ直中      渡辺あや作詞『孤独のあかつき』より

渡辺あや脚本の一連の物語のようです。

 

 

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